見上げるくらいの急な階段と長い坂道を、まるで修行僧のように「えっほえっほ」とみんなで登り切ると、その先に見えてくるのはとある中学校の学び舎。 ほぼ毎年おじゃましているこの中学校での活動は、今年でいったい何回目になるでしょうか。 今年度は1年生の皆さんとの、身体を使ったコミュニケーション活動でした! と、もちろん活動の報告を真っ先にしたいのですが、今年はもうひとつ活動がありました。 なんと! 事前に「みんなで体験してみましょう~」と、先生方が異例の体験会を開いてくださったのです。生徒さんたちとの活動の事前の打ち合わせも兼ねて、実際に先生方に活動を体験してもらう…こんなこと、めったにありません! うわぁ、超嬉しい~!! しかし、喜びと同時に、わたしの脳内では一抹の不安が巨大化します。 「先生方って、いったいどんなノリなのか……」 「忙しいのになあ、時間の無駄だ」「何やらされるんだぁ?」――わたしの脳内劇場では、厳しい顔をして腕を組み、冷たい視線を送る先生方を相手に、ひとり滑りまくっている光景が繰り広げられます。ああああ!助けて~。 ところが、現実はわたしのネガティブな妄想を、光速で打ち砕いてくれました。 校長先生はじめ、先生方が多目的室でわいわいと身体を使って表現活動を始めると、そこは一瞬にして「ニコニコ笑顔のおちゃめな大人たち」の空間。 グループで静止画を創る活動のお題「職員会議」では想像以上の熱演で、どのグループも爆笑のピクチャーが飛び出しました。 ああ、こんなおちゃめな先生たち、生徒さんに見せたかったなあ!!! 多忙な日常を忘れ、全力で「初めての体験」に飛び込んでくださる先生方の姿。 こんな先生方たちと日々を過ごしている生徒さんたちに出会うのも、ますます楽しみになった帰り道だったのでした。 安田カオル
「表現教育の必要性とは?」 ★表現とは何か? ひと言で言えばコミュニケーションだと思っています。 ★舞台演劇とは芸術なのか、エンターテインメントなのか? 人それぞれ意見はあると思います。芸術なら自分が最高と思えるものを創るだけだが、エンターテインメントなら、目の前のお客さんを楽しませて初めて意味が生まれます。 役者の勉強を始めたころ「会話のキャッチボールが出来ていない」ということを良く言われました。「相手が投げて来たボールを受け取らず、自分が用意したボールを投げてるだけだ」 今ならその指摘も分かりますが、当時は意味不明でした。 ★コミュニケーションとは何か? 簡単に言うと「受信」と「発信」です。同じセリフであっても、その言葉に込められた感情や言い方は毎回違います。なのに最初のころは、それを無視して台本から読み取り用意したセリフをただ言っているだけでしかなかったのです。 そして舞台ならば、相手役だけでなく、その時のお客さんと息を合わせて演じて行くという、お客さんとのコミュニケーションも必要になって来ます。 ★なぜ実演家が教育現場へ行くのか? 表現力を高めると簡単に言ってしまいますが、実際にはそこに至るまでにたくさんのハードルがあります。子供は自分の心に嘘をつけません。大人はやりたくなくても自分の心に嘘をついて行動に移せますが、子供はやりたい気持ちにならなければ行動に移せないのです。だからこそ実演家が、その感性で子供たちの表現の種を見つけ、拾い上げて火をつけていくという作業が有効になって来ます。 そして表現教育の一番の重要な点は、体験を通して学んでいくということに尽きると思います。時には少人数で、またある時にはクラス全員で協力して何かを創り上げていくという体験は、知識を得るのではなく気づきという点で成果を発揮出来るものと考えます。 ADEF幹事 石川健二